痙性は、脳血管疾患や脊髄損傷、多発性硬化症などによって起きる過剰な筋肉の緊張状態をさします。軽度の場合は筋肉の硬直や筋肉の敏感な過剰反応、重度になると脚全体が運動不能にもなります。この痙性は、両腕や両脚だけでなく体幹(上半身)にも起きえます。その症状の度合いによって歩行だけでなく寝返りや起きる、座るなど基本的な動作を阻害する事になります。症状によっては、ご家族の介護負担にも大きく影響します。

痙性のリハビリ

症状の程度によってその内容は大きく変わります。四肢全体に運動障害がある場合、基本的な動作の獲得が不可欠です。また、痙性を抑制しながら四肢の動きを改善していく必要があります。ストレッチや筋トレでは単純な曲げ伸ばしではなく、例えばお尻を上げる運動(膝を立ててお尻を上げる)をすることで痙性を抑えながら支える筋を活性化できます。このトレーニングを基本として、不安定な状況を作り、さらなる痙性の抑制や支えの強化と動きの改善を図ります。次に、歩行の改善には全身動作の改善をしなければなりません。左右の寝返りやうつ伏せの動作・姿勢は、四肢体幹の根本的な動きです。起き上がる・座位を保つための体幹機能を高めます。

さらに痙性の抑制と筋肉の働きを高めるために、四つん這いや膝立ちを行います。この動作・姿勢は四肢体幹の強化やバランスの向上にも働きます。これらの姿勢・動作は両下肢を曲げた状態での保持になりますので痙性をさらなる抑制に繋がります。これらの姿勢からさらに痙性の抑制と強化を図る場合、片膝立ちや膝歩きを行います。これらの動作が行えるようになれば、歩行の改善・自立歩行へと繋がっていきます。

歩行は、すべての動作の総合力です。痙性の症状にとらわれることなく、さまざまな動作の改善をしなければなりません。