脳梗塞や脳出血を患った方のリハビリを行っていると、家族から「病気してからボケたみたいなんです。」「たまによく分からない事言うんです。」などの話を聞く事があります。

家族の話やリハビリ中の反応を見ていると認知症の症状の方をみます。
認知症は家族にとって、精神的ストレスをなくし長年介護をしていく上で大変重要な問題です。

認知症を完治する事は現状難しくはありますが、適切な薬の処方や対応次第で認知症症状を軽くする事はできます。認

知症は、記憶障害、見当識障害(時間・場所・人物の)、認知機能障害(計算・判断力・失語など)の中核症状と幻覚、妄想、徘徊、抑うつ、暴言暴力、異食症、性的羞恥心の低下などの周辺症状(BPSD)が見られます。

認知症のタイプ

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は認知症の中で、最も多いとされています。脳内にアミロイドβやタウとよばれるたんぱく質が溜まり神経細胞が壊れて死滅し、認知機能が低下し、徐々に進行すると脳萎縮が起こり身体機能も低下します。

主な症状としては、以下の通りです。

記憶障害

一般的な物忘れは、約束など忘れた事を指摘されると気づき思い出しますが、アルツハイマー型認知症では約束した事自体を忘れてしまいます。

見当識障害

自身のおかれている状況が分からなくなる事です。買い物など外出先で迷子になってしまったり、自宅内でもトイレの場所が分からなくなり失禁してしまう事があります。

BPSD

徘徊や物忘れ妄想、暴言暴力などです。

アルツハイマー型認知症への対応

不安を取り除く

何度も同じ話を繰り返す事があります。
しかし、家族は何度も聞かされていると「またその話?」「さっきその話したよ」と言ってしまいます。 本人にとっては大切に思っている内容で言った事を忘れているだけです。
できるだけ話に付き合い、別の興味ある話題へと転換すると良いでしょう。
見当識障害があるとどこに何があるのか分からなくなります。
トイレのドアに標識を記したり、箪笥の引き出しに衣類の内容を書くなどします。
妄想は不安の表れの典型です。
大切な物をどこに置いたか忘れる事で物盗られ妄想となりますので安心感を与える事が大切になります。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血の後遺症によって起こる認知症です。
アルツハイマー型認知症は徐々に症状が進行していきますが、脳血管性認知症は、症状が出現したりしなかったりします。
また小さな梗塞を何度も起こしていると悪化が見られます。
よく見られる症状として、以下のものが挙げられます。

まだら認知症

意欲もなく過ごしている事もあれば、明瞭に積極的に活動している時もある。物事を出来ない時もあればしっかり出来る時もある。1日の中でも見せる姿が変わる事があります。

感情失禁

すぐに泣きだしたり、怒りっぽくなったり、抑うつ傾向になる事があります。

脳血管性認知症への対応

生活習慣に気を付ける

脳梗塞や脳出血は、肥満や糖尿病などの生活習慣病が原因になっている事があります。食習慣や運動不足を解消し、規則正しい生活をします。

リハビリテーション

脳梗塞や脳出血による運動麻痺を改善するリハビリテーションの実施は脳を活性化し、症状を軽減させる事があります。

責めない

その時々によって抑うつになったり意欲がなくなったりして、できる事ができないという事があります。その事に対して「何でできないの?」「しっかりしてよ」と責めるのではなく、話をよく聞きどんな思いを持っているのか共有する事で意欲を高めます。

レビー小体型認知症

大脳や脳幹にレビー小体というたんぱく質が神経細胞に溜まる事で神経症状や認知症症状が起こります。

幻視

「知らない人が部屋にいる」「虫がいる」などの幻視が見られる事があります。
パーキンソン症状:表情が固くなり無表情となる、筋肉が固くなる、手が震える、バランスが不良となる。食事や着替え、トイレ・入浴など身体介護を必要となる事もあります。

抑うつ

初期にはうつのような症状が見られる事があります。
レム睡眠行動:睡眠中に筋緊張が緩和され、夢で見ている内容を実際に行動してしまう事があります。

レビー小体型認知症への対応

安心させる

幻視は本人にしか見えません。幻視を訴えられたら否定するのではなく、幻視として見えている「虫や人」を追い払うなどの対応をします。

リハビリテーション

筋肉が固くなり四肢の拘縮の改善、バランスや歩行障害の改善を図るためにもリハビリテーションが必要になります。

転落・転倒の予防

レム睡眠行動が見られる場合、ベッドから転落する事があります。転落防止のためのベッド柵を設置します。また、パーキンソン症状のある方は転倒のリスクが高くなります。自宅内の段差の解消や手すりの設置をし、転倒を予防します。